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【所長コラム】「0(ゼロ)グラム」へようこそ Act.2

超低価格ノートとクール・ジャパン

2008年11月11日 20時00分

 5~6万円台のミニノートが売れていて、「この市場って今後どうなるのですか?」とよく聞かれる。ブームの火付け役となったASUSTeK(アスーステック、以下ASUS)やAcer(エイサー)など、台湾メーカー製品が売れているともいわれる。しかし、「このまま定着していってパソコン市場は大きく変化するでしょう」と答えざるを得ない。

 簡単に整理すると、次のようなことが言えると思う。

 さて、このまま定着してしまう理由は、これが、台湾の“業界構造”が生んだ現象だからだ。台湾といえば、世界のパソコンの7割を作っている(工場は中国だが会社としては台湾)。

 1年ほど前に、「EeePC」(イーピーシー)というミニノートが299~399ドルで登場して世界に衝撃を与えた。これを発売したASUSは、世界のマザーボード(デスクトップパソコンの中身)の3分の1を生産する業界の黒幕的メーカーだ。

同社は従来からノートパソコンを作ってきたが、EeePCを投入するまではトップ集団に食い込めてはいなかった。つまり、デスクトップで圧倒的な強さを誇るメーカーが、ノートの分野にケンカを吹っかけてきた感じである。消費者が選択可能な隣接分野という点では、レストランが激安ランチを発売して、近所の弁当屋さんにプレッシャーをかけているようなものなのだ。

 しかし、単純な価格破壊ではなかったところが、EeePCの注目すべき点である。1年前に発売された初代EeePCは、液晶もカーナビ用の7型、内蔵ドライブは4~8GB、OSもLinuxと“安いなりの内容”だった。つまり、スペック的にはかなり低いのだが、要するに「いまどきネットしかやらないような人なら、こんなんでいいでしょう」というメッセージが明確に伝わってくる。

 アスキー総研が今年9月に発表した調査結果でも、一般ユーザーがミニノートでやりたいことの1位、2位は、メールとウェブだったが、3位はオフィスなどのアプリではなく「動画を楽しみたい」ということだった。ミニノートは、いわばネット時代の「メディアマシン」なのだった。


「EeePC」≒ホンダ「モンキー」なわけ

ホンダ「モンキー」
遊び心にあふれたホンダのミニバイク「モンキー」

 先日、あるところで「EeePCと比べられる過去の製品といえばなんだろう」という話になった。私の意見は、1960年代の絶好調期にホンダが投入したミニバイクの「モンキー」である。

 ミニという点が共通しているというような話ではない。なぜ「EeePC」と「モンキー」が似ていると思えるのかというと、市場のニーズを誰よりもよく知っていて、それを遊び心を持ってクリアしているからだ。

 バイクが、まだ実用しか考えられていなかった時代に、ホンダは三輪車のようなサイズでレジャーが主目的のバイクを作ってしまった。誰もが考えてはいたかもしれないが、実行に移していなかったことだ。ASUSのEeePCも、同じように常識を破って、ネット主目的のパソコンを作ってしまった。液晶サイズ7型(通常10~15型)、内蔵ドライブは4~8GB(通常100GB以上)、OSは無料のLinux(通常はWindows Vista)である。そのノリのよさ、キレのよさが似ている。

ホンダ「モンキー」 ASUS「EeePC」
発売 1967年 2007年
メーカー 世界最大のバイクメーカー 世界最大のマザボメーカー
創出ジャンル レジャーバイク ネットブック
遊び心 常識外れのサイズ 常識外れのスペック
インパクト 外観 価格
製品の性格 遊び&実用 実用&遊び

 冷静に分析すれば「違っている」点も少なくないが、市場からの突き抜け方が共通している。「モンキー」に対して、ちょっと大きい「ゴリラ」なんてのも登場したのを、ご存じの方もおられるだろう(いかにノリがよいか分かるでしょう)。

 さて、表題で「超低価格ミニノートとクール・ジャパン」と書いたのは、モンキーがクール・ジャパンだというこじつけではない(確かに良質なクール・ジャパンの元祖的存在かもしれないが)。続きは、次回。

Eee PCのマネージャー スワロフスキー
先月、台北で行われた「EeePC S101」発表会の風景。露出度の高いお姉さんが司会で出てきたと思ったら、同社のノートパソコンをとりまとめている人物なのだとか。同社のノリと勢いと遊び心を感じさせるシーン。日本でも11月に発売される、EeePC S101のヒンジの端にあしらわれたスワロフスキーのクリスタルガラス。「ネットユーザーの半分は女性なのだから」と言わんばかりだ。日本メーカーが作ってエビちゃんが広告したら、確実にハマる製品ではないか?

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■このコラムについて

 アスキー総合研究所所長の遠藤 諭が、コンテンツ消費とデジタルについてお届けします。

 本やディスクなど、中身とパッケージが不可分の時代と異なり、ネット時代にはコンテンツは物理的な重さを持たない「0(ゼロ)グラム」なのです。

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