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【ニューズレター】「ASCII Research Interview」 Vol.2

日本発の最注目サイト「pixiv」のヒミツ(前編)

聞き手=遠藤 諭 構成=村山剛史 撮影=吉田 武

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2008年12月02日 22時43分

―― スタート前に、片桐さんは「これはダメだろう」と思ったとのことですが、なぜでしょうか。

片桐 イラストと写真の違いをシステムでは判断できないので、我々が「このサービスはイラスト向けです」とアナウンスしても、ユーザーはおかまいなしに写真などをアップする可能性が高いと思っていました。システム的にユーザー層や使い方を制限できない以上、コンセプト通りに使われるとは限りませんから。

―― ビジネス向けSNSと銘打っているにもかかわらず、遊び相手を求めるメッセージが飛び交っていたりするのは既存の特化型SNSでもよく見られる現象です。pixivの場合も、一歩間違えれば、新手の画像アップローダーと化す恐れがあったということですね。

片桐 ですから、これだけのコミュニティになるとは思っていなかったんです。かなり嬉しい誤算でした。

ピクシブ永田寛哲氏
ピクシブ株式会社取締役 永田寛哲氏 「創業時に大きい目標を掲げても、会社を回すことに追われたり、そこそこ儲かる仕事に気をよくして、たいてい当初の目的を忘れてしまう。でも、この会社は創業時から志がブレていません」

永田 「イラストをつなげる」というコンセプトは、かなり新しい切り口でした。たとえイラスト好きが集まるSNSでも、コミュニケーションの手段は結局テキストです。「アップロードされたイラストに対してイラストで反応を返す」という設計思想を持っていたのは、おそらくpixivが初めてでしょう。

―― その実現に一役かっているのが、タグ付け機能ですね。

片桐 タグ、そして「イメージレスポンス」ですね。これは、まさに絵に対して絵で反応するというもので、ユーザーA「○○の絵を鉛筆で描いてみました」→ユーザーB「その絵にペン入れしてみました」→ユーザーC「さらに色を付けてみました」というような流れを発生させることができます。これがあることによって、各種の企画への参加が容易になっています。YouTubeにも「ビデオレスポンス」がありますが、あれよりもうまく機能していると思います。

 そのほかにも、タグ付け機能を使ったユーザー発信の企画が複数立ち上がっています。例えば「ファンタジー世界のイラストを描こう」という企画ならば、賛同するユーザーたちは企画主旨に沿ったイラストに「ファンタジー世界のイラストを描こう」タグを付けてアップすることで、ゆるやかなコミュニケーションが生まれるというわけです。

―― それは、御社が使い方を含めて誘導した結果なのでしょうか?

片桐 誘導はしていませんが、pixivが始まってすぐにそんな動き(タグを使ったユーザー発信企画)があることがわかったので、これはサポートするべきだと思い、使用数が多いタグの一覧を表示する「注目のタグ」という機能を追加しました。それ以外には、特に企画専用の何かがあるというわけではありません。

イラストを描くユーザーも、コメントを書くだけのユーザーも
想定以上に多かった

―― それらのアイデアを進化させたのが「drawr(ドロワー)」ということですね。

drawr
「drawr」は、イラスト版Twitterといった趣のサービス。Twitterが何気ない短いコメントを連ねていくのに対して、こちらはその場で描いたイラストを次々にアップしていくことでコミュニケーションを図る。drawr上の単純な描画機能を使って絵を描くのだが、ここに並ぶイラストも驚くほどクオリティは高い。

片桐 そうです。drawrは、Twitterのイラスト版(テキストの代わりに絵をポストする)とも言えるようなサービスです。drawrには、文字を書き込むスペースが一切ありません。絵のみでコミュニケーションを追求する場所に仕上げています。

※「drawr」はpixiv派生のイラスト投稿サービスで、2008年10月にスタート。お絵描きツールとお絵描き帳を一体化させたようなもので、他者の投稿イラストに対して自らもイラストで反応することを主眼に作られている。IDはpixivのものと共有。

―― 片桐社長や永田取締役には、そもそもイラストへの関心があったのでしょうか。

片桐 永田は、ゲームやマンガなどのオタク文化に長く触れていることもあって、ネット上のイラスト文化にも造詣が深かったんです(編注:永田氏はコミケにも15年連続で足を運んでいるという)。

永田 片桐は、システム的にこのサービスはダメだろうと思っていたと先ほど説明しましたが、僕はそれに加えて、マーケティングの視点からもダメだと思っていました(笑)。具体的には、10万ユーザーが壁になって、どんなに増えても十数万規模、収益も月に200~300万円程度入ってくれば御の字じゃないかと。少なくとも現状の数字は夢物語でした。そう判断した理由は単純で、コミケの入場者数であるとか、既存のリンク集サイトなどの現状を見ると、母数はこんなものだろうという読みがあったからです。

―― その読みが、大きく外れた原因は?

永田 ひとつには、イラストを描かずにレスポンスするだけのユーザーさんが、思ったよりも積極的に登録してくださったことがあります。もうひとつは、やはり僕が想像していた以上に自作イラストを見てほしいと考える方が多かったということでしょう。毎月コンスタントに5万ユーザー以上増えていく現在の状況は、当初は想像できなかったですね。長く続けていけば、もしかすると10年後などには数十万規模になるかもとは思っていましたが、こんな急激に盛り上がっていくとは、予想もしていませんでした。

―― pixivで、イラストはアップロードしないまでも、コメントやブックマーク等は利用しているユーザーのことは、掲示板などと同じくやはり「ROM」(リード・オンリー・メンバー)と呼ぶのでしょうか?

片桐 以前、ITmediaさんのインタビューを受けたときにROMと表現してしまったのですが、決してROMではなく、コメントやタグ付けなどでコミュニケーションしているので、後から「言い間違えた!」「こんな言い方しちゃダメだろ!」と思いました。ただ、この手の利用法を指す言葉がまだないので、表現に困っているところです。ちなみに、このような使い方をしているユーザーが約7割を占めています。この人たちがコメントをくれたり評価してくれないと、絵を描くモチベーションが上がりません。

永田 ニコニコ動画も、面白いコメントが付かなければ意味のないサービスになってしまいますから、そういう意味では、イラストをアップロードする行為とコメントを書き込む行為は同等だと思います。ベクトルは異なりますが、どちらも場を盛り上げていることには変わりません。

―― では、アップロード中心のユーザーとコメント中心のユーザーを区分けするというようなことは考えていらっしゃらないと。

永田 ありませんね。

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