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【ニューズレター】「ASCII Research Interview」 Vol.3

日本発の最注目サイト「pixiv」のヒミツ(後編)

聞き手=遠藤 諭 構成=村山剛史 撮影=吉田 武

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2008年12月18日 18時11分

「受託開発は食うため」で、
常に自社サービスを出していく

片桐 pixivの強みは、ビジネスモデルありきのウェブサービスではなかったことだと思っています。企業の都合が前面に出ているCGMというのが、結構あるんですよ。「どうせまとめて書籍化するんだろう」といった意図が透けて見えていたりします。そうなると、盛り上がらないですよね。現時点では、「ビジネスをしよう」という発想では、CGMのプラットホームは作れないでしょう。

 たとえ話ですが、普通に考えて、ネット上の新聞記事は消えないほうが便利です。でも、新聞社はだいたい1カ月ぐらいで消してしまいます。あれは「アーカイブを売る」というビジネスモデルがあるから消さざるを得ないのだと思いますが、それがユーザーの使い勝手に影響を与えているのです。しかし、だからといって公開し続けると肝心のビジネスモデルが壊れてしまうわけです。そんななかで、仮に新聞記事にユーザーがコメントを付けられる仕組みを作ったとして、それをマトモに運用しようとすると新聞社は記事を消せなくなってしまいますよね? ですからCGMは、ある側面から見ると自分たちのビジネスモデルを破壊しかねないものだといえます。

 そして、もうひとつ気になっているのは、既存のウェブサービスが「Googleありき」になってきていることです。Googleに依存し過ぎではないでしょうか。例えば、はてなの場合はテキストに軸を置いていて、テキストが検索にヒットすることによって広告収入を得る仕掛けになっています。となると、たぶんはてなはテキストを排除したウェブサービスを作れないんですよ。「はてなハイク」というTwitter+お絵かき掲示板のようなサービスもありますが、あれも結局はキーワードというテキストでつながせる作りになっています。そんな流れの中で、テキストに依存しないサービスがあってもいいんじゃないかと思って作ったのが、drawrなんです。drawrは全部画像ですから、これならGoogleにも引っかかりようがないぞって(笑)。

永田 そういう意味では、僕らはビジネスからかけ離れている存在かもしれません。常に最後にされるのがお金のことですから、経営的な視点で見ると、経営者失格なんじゃないかなと(笑)。

アスキー総研遠藤所長
聞き手のアスキー総合研究所所長 遠藤 諭。「pixivが世界に羽ばたくウェブサービスになったら、pixivの手作りサーバもGoogleのようにコンピュータミュージアムに展示されるかもしれませんね」

―― pixiv以前はどのような経営ポリシーだったのでしょうか。

片桐 システムの受託開発に関しては順調でしたね。キャッシュにも余裕がありました。

永田 当時のほうが、むしろ儲かっていましたね。

―― ということは、その当時の蓄えがあるからこそ、pixivが運営できている?

永田 とはいえ、大した規模の会社ではないので(無理がきいた)ということもあります。もともと会社を片桐と一緒に始めるときから、明確な目標があったんです。「受託は食うためである」と。そして、「常に自社サービスを出していく」、そのなかで当たったものがあれば「それに注力していって、世界に出る」。僕はこの目標に共感してこの会社に入りました。そして、僕らの場合はたまたま2、3年でヒットサービスが出ましたが、普通はなかなかうまくいきません。そうなると、受託事業が軌道に乗り始めたあたりで「こっちのほうが面白いよね?」「この路線でいいんじゃない?」という考えが頭を占めてきます。可能性の低い夢は捨てて、売り上げ伸ばして会社を大きくしていこうよ、となってしまうんですね。そんな誘惑を一切排除して(pixivのブレイクまで)突っ走れたのはよかったと思っています。

―― そういった目標を掲げている会社は多いのでしょうか?

片桐 何千社もあると思いますし、実際にいくつものウェブサービスをリリースしています。でも、当たらない。そして結局、受託事業を優先してしまって、表に出て来られない/リリースにまで至らないサービスが山ほどあります。これは、ベンチャーに限らず大手でも同様です。

永田 ちょっと変わったものを出したらマニア層に受けて、「○○社の技術力はすごいよね」とか言われるだけで満足してしまったりします。

―― マニア受けするサービスをリリースし続けることが、社内での点数を稼ぐための方策になり果てていたり、とかいうこともあるでしょうね。

永田 もしくは「こんなサービスを作れる技術力を持っています。つきましてはウチに受託してください」みたいな、クライアントを得るための道具になっていたり……。そんななかで、ある意味破れかぶれな突っ走り方をしたピクシブという会社は、相当珍しいのではないかと思います。少なくともそんな経営判断をする社長に会ったのは片桐が初めてでした。

―― そんな御社にとって、pixivは何打席目なのでしょう?

片桐 4打席目ですね。それまでも雑誌にサービスが載ってインタビューがたくさん来る、ということはありました。例えば、バンドなどのフライヤー(ビラ)代わりに使われることを想定した「会員登録なしでブログの一エントリー分だけを生成するサービス」はスマッシュヒットしましたね。

永田 実はそのサービス名が前社名の「crooc(クルーク)」なんです。

片桐 そのほかにも、タスク管理サービスやCMSも作りました。しかし、どれもスマッシュヒットはするのですが伸びがなく、当時は「サービスってどうやれば当たるんだろう?」と思っていました。よくpixivはシンプルだと言われますが、これまで僕らがリリースしてきたサービスに比べると、複雑なほうなんですよ。

―― そして、思いもよらないところからヒットサービスが現れたわけですね。

片桐 そうです!

片桐社長
「僕らが、世界初のpixiv厨です」(片桐社長)

―― ユーザー数150万を目指すとのことですが、達成予定は何年後ですか?

片桐 今のペースで計算すると年内に50万ユーザーを超えるので、来年中には100万、そして2年後に150万を達成できればと考えています。海外進出のほうは、まずdrawrが今年中にオープンします。さらに来年前半には、pixivの台湾/韓国版も始まります。

永田 来春にはブログサービスがスタートしますし、構想・準備段階の機能もいくつかあります。しかし、機能追加よりも、まずはpixivを信頼性の高いサービスとして育てることが目標です。みんなが満足できる場を追求していきたいと思います。

―― 最後に、おふたりはpixivでイラストをアップロードしていますか?

片桐 drawrは使うのですが、2人とも絵が描けないので、さすがにpixivではちょっと……。ただ、世界で一番pixivを見てるのは、僕らもしくは開発者の上谷ですね。僕らが、世界初のpixiv厨です(笑)。



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