アスキー総合研究所 > 所長コラム > 迷わないヘンゼルとグレーテル
【所長コラム】「0(ゼロ)グラム」へようこそ Act.14
2009年02月25日 16時42分
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| 位置情報(ジオタグ)付きの写真をアップロードすると地図情報も表示されるアルバムサイト「パノラミノ」。 |
米国で国内便の機内誌を見ていて「オヤ?」と思った。「たまごっち」より少し大きいデバイスの液晶画面に、方角や距離が示されている。説明を読むと「ショッピングのあと、駐車場で簡単に車を見つけられる」、「ビーチやキャンプ場で、自分の好きなところに戻れる」などと書いてある。ボタンは2つしかなくて、電源ボタンをオンにしたら、覚えさせたい場所でもう1つのボタンを押すだけである。あとは、液晶のコンパス表示が、記録した場所の方向と距離を示すようになっている。
要するに、小型のGPS(全地球測位システム)が組み込まれたデバイスなのだ。米国のようにだだっ広くない日本の駐車場やアウトドアの遊び方に、意味があるかどうかは不明である。しかし、5000円ほどのお値段で、キーホルダーになるようなGPSデバイスが出てきたことは確かだ。
わたしの知人の社長さんは、ポケットサイズの「GPSロガー」をぶら下げて、ゴルフコースを回っている。データをパソコンに移せば、その日どんなふうにコースを回って、どこでどのくらいの時間を費やしたかが、グーグルアース上にきれいにプロットされる。「GPS電子タグ」を使って、コンテナの日米間の輸送をリアルタイムで管理するシステムも作られている(双日が国交省や日本郵船などと協力して開発)。要するに、個人利用から社会システムまで、GPSのアプリケーション・レベルが上がってきている。
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もちろん、自分の位置が分かるとか、目的地までナビゲーションしてくれるだけでもありがたい。個人的には、すでにEZナビウォークがないと外にも出かけられず、「ヘンゼルとグレーテル」のように迷子になりそうで心配になる。しかし、GPSを内蔵したニコンの「COOLPIX P6000」やGPSロガー(Holux 241)を使っていると、位置情報に関連するアプリケーションは「ほぼ無限」とさえ感じるのだ。
2月18日・19日に、国立代々木競技場第一体育館で行われたファッションイベント「rooms」の会場内で、ソフトバンクテレコムによる「セカイカメラ」の体験会が行われた。セカイカメラは、iPhoneの液晶画面を通して見える風景に、タグを貼ってコメントを書いたり、他人の貼ったタグを見られるサービスである。要するに、地図にポストイットを貼るような感覚で、目の前の風景の中にタグを付けたりメモを書き込んだりできる。
いまいる場所についての情報を読み書きして共有するだけだから、わざわざカメラをのぞいてタグを貼るという大げさな行動は、本来不要にも思える。その意味では、よくある気の利いたiPhoneアプリのような、遊んだ面白さを楽しむソフトという見方もできる。しかし、まさにその無駄に見えるカメラをのぞくという行為によって、バーチャルとリアルが同次元になるのだ。デジタルがリアルとの間にある垣根を越える瞬間のようなドラマチック感が、このソフトを注目させているのだといえる。
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| 頓智・(トンチドット)が開発した「セカイカメラ」のデモ会場風景。海外でも注目された。 |
もっとも、このセカイカメラが位置情報におけるグーグル的な存在になるかというと、なんとも言えない。iPhoneで遊んでいたら、ちょっと未来がめくれて見えたという程度の話のような気もする。もちろん、こうして動くものを見せてきたところが素晴らしいのだが。
これからは、緯度・経度の情報もさることながら、地磁気センサによる3次元方位や高度(これが意外にチップにのらない)なども注目されてくるだろう(iPhoneはデジタルコンパスを搭載していないため、セカイカメラも「その場所」にタグを貼ることはできるが、のぞいて見える「物体」にタグを貼れるわけではない)。人間の五感に相当するモバイルデバイスのセンサ(五感にあたるもの)が、どんな定番セットになるかはちょっと興味深い。
位置情報によるアプリケーションに思いもよらない広がりの可能性を感じるのは、視覚や聴覚、触覚などと異なり、位置や方位の感知はもともと人の身体能力にはない働きだからだ(一説には、人間の鼻の中には小さな磁石が入っていて本当は方位は分かるのだともいわれるが)。
アスキー総合研究所所長の遠藤 諭が、コンテンツ消費とデジタルについてお届けします。
本やディスクなど、中身とパッケージが不可分の時代と異なり、ネット時代にはコンテンツは物理的な重さを持たない「0(ゼロ)グラム」なのです。