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【所長コラム】「0(ゼロ)グラム」へようこそ Act.20

メディア・ポールに触る

2009年04月20日 01時12分

江南大通り沿いに、まるで街路樹のように立ち並ぶ、高さ約12メートルの「メディア・ポール」。

 1999年頃、ウェブ事情を調べていると韓国に行き当たることがよくあった。そこで、旅行で訪れたこともなかった韓国に、取材ではじめて出かけた。当時の韓国は、ネット利用ではいくつかの部分で明らかに米国より進んでいた。すでにストリーミングも盛んで、Web2.0に通じる議論もさかんに行われていた。

 アスキー総研が4月9日に開催した「コミュニケーション・デザインの未来」トークセッションの第1回で、濱野智史氏も紹介していた「DC INSIDE」の取材も楽しかった。大統領選挙にも影響を与えたといわれるデジカメサイト(!)だが、写真投稿の評価システムや、ビジネスを成り立たせている共同購入も説得力があった(社長のキム・ユシク氏はいまいろいろと大変らしいのだが)。

 ここ4~5年ほど韓国には出かけていなかったが、今回たまたま訪問の機会があって、ソウルに来ている。以前の韓国取材で何度もお世話になった、プロレスラーでモバイル系ライターで動画系CP経営者のKさんとも再会。そうしたら、「エンドウさん、江南(カンナム)にぜひ出かけてみてくださいよ」と言われた。

 なぜ江南かというと、代表的な目抜きどおりである江南大通り沿いに、ソウル市と江南区が共同で「メディア・ポール」と呼ばれる柱状のデジタルサイネージを設置したからだ。今年3月に竣工したばかりのこのメディア・ポールは、単なるディスプレイ装置ではない。歩道側の大型タッチスクリーンでは、さまざまな対話形アプリケーションが提供されているという。

 「デジタルサイネージ」は、いま最も注目される社会インフラのひとつといえる。屋外用の大型ディスプレイの単価が下がったこともあるが、カメラなどのセンサ技術との連携や、ネットワークとの接続性が向上したことで、「動くビルボード」の領域を大きく超えはじめている。

 この分野の利用スタイルが、まだ発展過程であることは、JR東日本の「トレインチャンネル」が物語っていると思う。ドアの上の2つのディスプレイの使い分け(1つは運行情報で1つは広告)、電車が駅に止まっている間に無線でコンテンツの入れ替えを行うなど、1つ1つのトピックが新しい。

 それだけに、アプリケーションの開発は知恵の絞りどころになりそうだ。いまのところ、これがコンテンツ配信のプラットフォームなのか、情報端末として有効なのかは、誰にも判然としていない。そのように考えはじめると、映画館やテレビや携帯やHMDまで、正体の判然としない「ただの画面」のようにも思えてくる。むしろ、裏側の配信のルールやメカニズムやエコノミクスが問題になってくるのだろう。

よりパブリックな環境を > として並べてみた。もっとも、こうして同列に並べると、どのメディアも同じようなものに見えてくる。

 Kさんに教えてもらった翌日、メディア・ポールのある江南大路まで出かけてみた。道路の片側だけ、760mの区間に、30m間隔で22本のかなり大きな四角柱がずらりと並んでいる。ポールの高さは12.38mもあり、幅1.43m、厚さ0.65m。道路側と歩道側の面のほとんどは、LCDとLEDで覆われている。

 超縦長のスクリーンは、モダンなグラフィックや水墨画のような伝統美的な映像など、一斉に同じコンテンツを映し出す。そうした風景も新しいのだが、むしろ韓国らしいと思えるのは、情報キオスク的な機能を持った大型タッチスクリーン(歩道側の一番下の部分がそうなっている)である。

 買い物などの地域情報を探したり、ウェブカメラを使って撮影したものを指定したメールアドレスに送れたり、3Dアバターを使ったダンスゲームや写真ギャラリーを楽しんだりできる。要するに、かなりの部分がネット・サービスである点が特徴なのだ。地図と地域情報系はYahoo! Koreaが提供しており、写真ギャラリーはFlickrにつながるようになっている。

 55軒あった屋台や看板を一掃してできたのは、ただの公共インターネットネット端末という見方もできる。ソウル市は超縦長のデジタルサイネージを、モダンな街路樹くらいにしか考えていないのかもしれない。

 しかし、この種の大規模なデジタルサイネージが設置されたというニュースは、これから何度も目にすることになるだろう。このメディア・ポールという名前のついた柱がずらりと並んでいる光景を見ると、これは「インターネットの(外気に触れる)地上への出口」のような気がするのだ。

メディア・ポールは、地図を表示したり、付近の店舗などを検索できるほか、ニュースの表示やゲームまでできてしまう。

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■このコラムについて

 毎週火曜日に、アスキー総合研究所所長の遠藤 諭が、コンテンツ消費とデジタルについてお届けします。

 本やディスクなど、中身とパッケージが不可分の時代と異なり、ネット時代にはコンテンツは物理的な重さを持たない「0(ゼロ)グラム」なのです。

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