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【ニューズレター】「ASCII Research Interview」 Vol.4

ついに登場したAndroid端末は、日本のケータイにとってチャンスか、ピンチか?

構成=アスキー総合研究所

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2009年05月20日 03時45分

HT-03A
NTTドコモが発表した国内初のAndroid端末「HT-03A」。台湾HTCの「HTC Magic」のドコモ版で、iモードやおサイフケータイ機能は搭載しない。FOMAハイスピード(通信速度7.2Mbps)に対応し、無線LAN、Blutooth、GPSを搭載して、6月~7月発売予定。

 5月19日、NTTドコモから国内初のAndroid(アンドロイド)携帯電話「HT-03A」が発表された。Googleが提供する、オープンソースの携帯電話プラットフォームであるこのAndroidは、日本の携帯電話メーカーと携帯電話キャリアにどんな影響を及ぼすのか? そして、端末は今後どう変わっていくのか? Androidの開発者グループである「日本Androidの会」の幹事で、同会Market Placeワーキンググループのリーダーである平出 心 氏(株式会社キーテル代表取締役)にうかがった。聞き手はアスキー総合研究所所長の遠藤 諭と、週刊アスキーで携帯端末を担当する矢崎飛鳥。



ベンチャーからも
携帯電話が登場するかもしれない

日本Androidの会の幹事で、Market Placeワーキンググループのリーダーでもある株式会社キーテル代表取締役の平出 心 氏。

遠藤 そもそも、Androidというのは携帯電話用のOSやモジュールが全部入っていて、入れたらすぐに動くというものなのでしょうか?

平出 これまでとは比較にならないくらいの難易度で、携帯電話を動かせるようになります。ですので、過去に携帯電話を作ったことのないメーカーが、参入してくる可能性もあります。現在の端末メーカー以外の、例えば家電メーカーや部品メーカー、ベンチャー企業からもAndroid端末が登場するでしょう。そういった意味では、既存の端末メーカーやキャリアは、あまりAndroidをやりたくないのかもしれません。

矢崎 もっとも、端末の販売奨励金の廃止やSIMロックのフリー化などで、現在の携帯電話のビジネスモデルが崩れるのは、あるていど既定路線ですからね。

平出 なので、今後SIMロックフリーの端末が1万円台でどんどん売られるようになるかもしれず、既存のメーカーの端末ではなく、そっちを使う人が出てくるでしょう。そうなると、ケータイがネットブックのようになるかもしれません。

遠藤 ネットブックの場合、ASUSTeKは半分は製造子会社から買っていますが、残りは他社から買っているんですよ。つまり、必ずしも台湾メーカーが製造直販だから安くできるというわけではなくて、海外で大量に売る根性があるかどうかなんです。だから、日本メーカーにもむしろチャンスなんじゃないでしょうか。船井電機みたいに、海外のセンスを持っている会社はやるかもしれない。

平出 日本の端末メーカーにとって、Androidは世界を相手にできるチャンスですし、ソフトもそうです。「Androidマーケット」では、アップルのApp Storeと同様に、個人でも大手コンテンツプロバイダーと同じ土俵に立って、世界にアプリケーションを配信できるようになります。

遠藤 大手コンテンツプロバイダーにとっては、大変なことになりそうですね。

平出 Androidマーケットにアプリケーションの課金を持って行かれると、キャリアの公式サイトはどうするのかという議論になります。オープン化が進むと、携帯キャリアはインフラのみになってしまうという危惧を抱いていますからね。

矢崎 オープン化が進むと、帯域も厳しくなります。現状でも、イー・モバイルは帯域制限を発表しましたし、ソフトバンクも結構厳しいと言われています。キャリアにとって、これからはネットワークの帯域をいかに確保するかが課題になるんじゃないでしょうか。

遠藤 実際の端末に触ってみた感じはどうでしょうか?

矢崎 Windows Mobile端末でもiPhoneでも、結局GmailとかGoogleカレンダーといったGoogleのサービスを使っていることが多いんです。だから、それが統合されているだけでも、Andoroid端末の使い勝手はよいと思っています。

アスキー総研遠藤所長
アスキー総合研究所所長 遠藤 諭

平出 ただ、モバイルに特化されたiモードのようなサービスに慣れた日本のユーザーは、こっちには移りづらいのではないでしょうか。

矢崎 おサイフケータイも現状は載っていないですからね。

平出 日本で売る端末には、どちらもいずれ入ってくるでしょう。ただ、Googleとしては、もともと日本はあまり重視していないと思います。

 例えば、ネットに接続できない携帯電話の多いアメリカなら、Androidを出すことで、これまで携帯電話からインターネットに接したことのない人にも、接続する機会を提供できます。そしてGoogleには、世界中の人がインターネットにつながってほしいという、さらに大きな展望があります。だから、PCも、携帯電話も持ったことがない人に、Android端末を使ってほしい。台湾メーカーが100ドル以下のAndroid端末を作ろうとしていますが、そういった端末で、アメリカから発展途上国まで、1人でも多くのユーザーがインターネットにつながる世界にしたいとGoogleは考えているはずです。

 もっとも、ノキアが「Symbian OS」をオープンソース化したことで、そういったGoogleの目的はある程度達成できつつあるとも言えます。Symbian OSが普及しても、Googleにとってはハッピーです。画面が大きくて、ネットにつながって、Googleのサービスにアクセスできる携帯電話が出てくればよいわけですから。

遠藤 とはいえ、日本の端末メーカーも、手をこまねいているわけにはいかないですよね。

平出 日本に閉じこもっていては、終わってしまいます。なので、日本の端末メーカーは、Androidでもう一度世界に出ればいいと思います。技術力はあるのですから。

矢崎 ただ、日本で売れる端末と、世界で売れる端末は違いますよね。ノキアが撤退したくらい、日本市場は特殊です。ですから、日本でAndroid端末は、ブラックベリーよりは売れるけれど……。

平出 iPhoneほどは売れないかもしれません。なので、サムスンのように日本用と世界用とを切り分けるとかですね。アプリケーションにしても、日本のアプリをAndroid用に作り直したら、実はかなり世界で売れるのではないでしょうか。「Android Developer Challenge」(Googleが開催した、Android用アプリケーションのコンテスト)に出てきた大半のアプリよりも、日本のJavaアプリのほうがレベルが高かったりしますから。

矢崎 ハドソンは、すでにAndroid向けにゲームを配信しています。日本のアプリメーカーも、感度の高いところは、続々とAndroidマーケットに出てくる可能性はあります。

週刊アスキー矢崎
週刊アスキー編集部 矢崎飛鳥

遠藤 iPhoneとの比較という点ではどうでしょうか。例えばiPhoneのルック&フィールって、単にマルチタッチという話ではなくて、あのフィーリングが重要なんだと思うんです。

平出 操作感については、iPhoneほどではないにせよ、Andoridもいいところまで行っていると思います。ただ、端末はそれほど変わらないとしても、AndroidとiPhoneではビジネスモデルが違います。iPhoneは、すべての流通をアップルが押さえています。端末の販売も、ソフトの流通もですね。これまで携帯キャリアがやっていたことを、アップルが代わりにやっている印象があります。一方でAndroidは、Googleがオープンソースとして公開したので、端末メーカーも多数参入できます。

遠藤 そういった意味では、唯一のマイナス面は、アプリの流通がGoogleの管理するAndoridマーケットだというところでしょうか。決済についても「Google Checkout」で、Googleの商売を一生懸命手助けすることになるんじゃないかという、一抹の不安があります。

Androidで
携帯電話のBTOも可能になる!?

遠藤 これから、日本ではどんな端末が出てくるのでしょうか。

平出 これは日本に限りませんが、Androidというのが表に出てきているようではダメだと思います。アーリーアダプターはAndroidというのに食い付くでしょうが、OSを気にさせているようでは、そこから先には広まりません。

矢崎 「HT-03A」はiモード非対応ですが、iモードは日本では必須でしょう。将来的には、iモードとオープンなインターネットとをシームレスに行き来できればよいと思いますが、当面はiモードと絵文字、おサイフケータイは必要だと思います。

平出 今秋以降に、日本の端末メーカーからAndroid端末が出てくる際には、それらは載せてくるでしょうね。さらに先には、”勝手ケータイ”のようなものがたくさん出てくるかもしれません。あるいは、ユーザーがBTOで自分専用に携帯電話のハードをカスタマイズできるとかですね。電波法などの制限はありますが、ウィルコムのW-SIMのような構造にすることで、端末の筐体や構成部品のBTOも可能だと思います。

遠藤 Androidについては、携帯電話メーカーがこれまで作り上げてきた世界と、PCのようなオープンな世界との間にあった垣根が、これでなくなるという側面があります。だからと言って、携帯電話が単純にPCのような世界になるのかというと、そうではありません。モバイル端末であるところに、無限の可能性が生じています。先ほど平出さんから、発展途上国で、PCも携帯も持っていなかった人たちにネットを使わせるのが、Googleの目標だというお話がありました。Googleの視点はそこにあるとしても、端末メーカーは、Androidでもっと勝手にいろんなものを作れるところがすごい。Androidに使われるんではなくて、使ってやるくらいの気概があると楽しいですよね。


 5月21日(木)に開催するトークセッション『上陸間近! グーグル・Androidが携帯とクラウドをどう変えるか?』では、第一部で『Google Android入門』の著者である嶋 是一氏が、Androidの基礎と最新事情をわかりやすく解説します。そして第二部では、日本Androidの会の会長で、Javaのエバンジェリストとしても知られる丸山不二夫早稲田大学客員教授、インターフェイスの研究で著名な増井俊之慶應義塾大学教授、『初めてのGoogle Androidプログラミング』監修者の安生 真氏(Google公認API Expert)が、Androidの及ぼすインパクト、コンテンツ・サービス、ユーザーインターフェイス、そしてAndroidとクラウドコンピューティングによる未来について、熱く語ります。


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