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【ジャパンエキスポ 2009 #02】日本アニメのDVD販売会社ディレクターインタビュー

違法ダウンロードユーザー遮断法とフランスのアニメDVD事情

聞き手=遠藤 諭、取材協力=エチエンヌ・バラール(Etienne Barral / SYSTEM B www.system-b.com)

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2009年07月21日 23時17分

『NARUTO』
フランスでアニメ、マンガ、ゲームとも絶大な人気を誇るのが『NARUTO』。DVDでは『ドラゴンボール』や『星闘士星矢』の販売額も大きい。

 フランスでの1970年代の『キャンディ・キャンディ』ブームは、テレビアニメが人気となったものだ。1980年代の『ドラゴンボール』は、テレビアニメからマンガに飛び火することになった。それでは、ジャパンエキスポ主催者のデュフール氏も指摘する2004年頃以降の日本のアニメ・マンガの盛り上がりは、どう説明されるべきなのだろう?

量販店店頭に並ぶSTB
フランスは世界一のIPTV大国などとも言われる。大手量販店には各種STBが展示されていた。

 英国・フランス・ドイツといった国々は、伝統や固有の文化や芸術を重んずるメディア政策をとってきた。ところが、ヨーロッパのメディア事情は、ここ数年で激変しているのだ。フランスについていえば、世界一のIPTV大国というにふさわしく、ネットとSTBを使って、基本契約だけで大量のチャンネルを楽しめる(※1)。

 ベルリンで開かれるIFA(ヨーロッパ最大の家電ショウ)に出かけたときに、ドイツでは、一般の人たちが無料で見られるチャンネルが30個もあると聞いて驚いた。ブロードバンドの普及率では、ITUのデータを見る限り日本以上ではないが、ネットがメディアのパイプとして機能している。コンテンツ生活にドップリ浸かっているのは、日本や米国の濃いめの人たちだけではなかったのだ。

 1970年代、1980年代は、テレビがきっかけとなって日本のアニメが人気になった。だが、いまは地上デジタル放送によるチャンネル数の増加と、IPTVによる専門チャンネルが、それに近い役割をはたしている。加えて、ネットの持つバイラルかつゲリラ的なパワーが、クール・ジャパンを加速しているのである。

 日本のコンテンツを使ったビジネスとして、テレビ放送、マンガ本に次ぐ存在が、アニメDVDである。JETROによれば、フランスのDVD市場における日本アニメのシェアは販売本数で2%(2008年)、子供向けに限定すると10%(同)といわれる。しかし、その販売額は2005年以降3年連続で減少しているという。

 ジャパンエキスポ企画の第二弾は、日本アニメのDVDを販売する「ダイベックス」(Dybex)のマネージング・ディレクターであるカルロ・レヴィ氏へのインタビューをお届けする。



『エヴァンゲリオン』
DVDが1万本!?

―― このビジネスをスタートしたのは?

レヴィ 1996年9月に会社を設立しました。最初のタイトルは『エヴァンゲリオン』や『新・キューティーハニー』などです。弊社はベルギーの企業ですが、フランスのほか、スペインやイタリアなどでも日本アニメのDVDを売っています。

カルロ・レヴィ氏
日本アニメの吹き替え版を広く販売するベルギー企業「ダイベックス」のブースにて。白シャツの人物が、カルロ・レヴィ氏。

―― 現在、扱っているタイトル数はどのくらいになりますか?

レヴィ カタログには125タイトルくらい掲載していますが、年間に60~80タイトルのDVDを発売しています。ほとんどすべてが吹き替え版ですが、字幕も用意していて、切り替えて見られるようになっています。

―― 1タイトルの販売枚数はどのくらいですか?

レヴィ 人気シリーズで、1タイトルで5000枚くらい。弊社は幸い、『エヴァンゲリオン』や『鋼の錬金術師』といった人気シリーズをいくつか持っていますが、販売枚数が1000枚に満たないものも少なくはありません。

―― フランスで日本アニメのDVDを販売している会社はほかにもあるのですか?

レヴィ 弊社のようなかたちで、多数のタイトルを頻繁に発売しているところは5社ほどあります(日本のアニメDVDを販売する会社としては、他にAB Video、KANA HOME VIDEO、KAZE、TF1 Videoなどがある)。

―― 現在のDVDの販売状況はどうですか? 世界的に景気が後退しているわけですが、日本のアニメDVDに関してはその影響は出ているのでしょうか。

レヴィ 不況の影響はもちろんありますが、それ以前から危機感を抱いていました。1つ目の理由として、販売価格の下落があります。1枚25ユーロ(3300円)で販売されていたものが、3カ月後には9ユーロ(1200円)という価格に下がってしまう。そうなると、ファンは3カ月待とうという気になってしまいますが、でも実際には3カ月待つうちに、購買意欲が失せてしまっているようです。これは、2006年頃から出てきた傾向ですが、歯止めがかかっていません。もう1つの理由として、ブロードバンドの影響で、DVDを買う意味はほとんどないと思っている層が出てきていることがあります。日本で放送された翌日か翌々日には、英語のファンサブ(fansub=視聴者による字幕)がついてアップロードされてしまいます。

日本アニメのDVDパッケージ
ダイベックスのブースには、日本アニメのDVDパッケージがずらりと並んでいた。

―― それに対抗する手だてはないのでしょうか?

レヴィ 我々にできることとして、4月から『鋼の錬金術師』のストリーミング配信をはじめています。これは、日本側からの提案で始めたものです。ファンサブによる影響をどうやって解消するかということで、ファンサブより早く、より高画質で提供する必要があると思い、合法的なストリーミングを、日本で放送されてから5日以内に流すということに取り組んでいます。

―― 結果はどうだったのでしょう?

レヴィ 4月4日に『鋼の錬金術師』の新シリーズ放送にあわせて流したのですが、1話で30万PVがありまして、11週間で150万PVを突破しました。画質はHDというほどではなく、またDVDの販売に繋げたいので、吹き替えではなく字幕版として提供しました。

―― まだ成果までは出ていない段階ですか?

レヴィ そうですね。デイリーモーション(Dailymotion=ヨーロッパのYouTube的な存在となっている動画共有サイト)と、広告を付けてシェアする仕組みについても話をしています。

ファンサブがなくならない限り
有料ストリーミングは厳しい

―― 広告モデルで回りそうですか?

レヴィ 『鋼の錬金術師』みたいに人気のあるシリーズは、広告の可能性はありますが、アニメのイメージにピッタリの広告がつかないといけませんよね。しかし、これはやるしかないと思っています。問題は、そこまでの人気がないシリーズで、そこで得られるPPM(サイトが見られた件数に応じた支払い方式=Pay Per Impressionで1000件単位の支払い)収入は、DVD販売とは全然違うものになってしまう可能性があります。

―― 有料モデルの可能性はないのですか?

レヴィ もちろん検討中ですが、まだきちんとしたビジネスモデルを組めていないのが実情です。違法なファンサブが完全になくならない限り、有料モデルには無理があるのではないでしょうか。いくら合法的にストリーミングをやっても、お客さんは無料のほうがいいでしょう。それを絶滅しない限り、有料モデルは成立しないと思います。

―― ファンサブを作っている人は、実際には非常に限られた数の人たちだといわれています。そのあたりに、ビジネスを成立させるヒントがあるのではないですか?

ドラゴンボールのコスプレイヤー
会場には、日本アニメのコスプレをした来場者も多数。

レヴィ いろいろな方法はあると思いますが、問題は、やはりユーザー側の意識が薄いことなんですよ。1日に20ユーロでダウンロードし放題などのサービスも可能ですが、儲かるのはプロバイダーなどパイプ側だけですよね。

―― フランスでは5月に、ネットで違法コピーをした人を処罰する法律が通りました。あれは、どのように影響してくるのでしょう。

レヴィ 「ハドピ」(Hadopi ※2)と呼ばれているものですね。

―― 違反者はネットへのアクセスができなくなるという点で、行き過ぎという指摘もあります。

レヴィ われわれのビジネスという観点からいえば、Hadopiはよい法律だということになります。

―― たしかに、米国では個人に対して訴訟が起こされることで、コピーが減ったという経緯があります。その結果、映像や音楽配信のビジネスが成立するようになったという見方もある。そういう点では、こうした法律は必要であるということでしょうか?

レヴィ 今回の法律は、まだ最初の試みというべきですよね。もちろん期待していますが、最終的にはどうなるか見えない部分があります。それは、これからの動きで判断するしかない。何からの規制をやっておかないと、いまのビジネスモデルは続きません。いまのままでは、映画館はなんとか営業を続けられるでしょうが、DVDの販売やテレビの有料放送は、インターネットによって商売にならなくなるでしょう。



※1 フランスは「ミニテル」(Minitel)という電話番号案内・各種予約・ショッピングなどが可能な情報端末が定着していたために、インターネットの発達が遅れたといわれる。しかし、ミニテルによってテレコム生活で世界的に先行していたフランスでは、大手プロバイダによるPCでのネットアクセス×IP電話×IPTVのトリプルプレイも一気に定着。30ユーロ/月程度の基本契約料だけで、ヨーロッパ各国のテレビ番組や専門チャンネルなどが見れるほか、日本も含めて国内外の固定電話への通話が無料のサービスもある。


※2 Hadopi:違法ダウンロードを取り締まるフランスの法律「Projet de loi favorisant la diffusion et la protection de la creation sur Internet」の俗称。警告を2回受けたにもかかわらず、さらに違法ダウンロードを行ったユーザーのネットアクセスを遮断することから、「スリーストライク」法とも呼ばれる。サルコジ大統領肝いりの法案で、5月に可決されたが、ネットアクセスはもはや基本的な権利であるとして議論を呼んでいた。6月には、仏憲法評議会がネット遮断に関する部分を認めない判断を出し、6月下旬から国民議会で審議が始まっている。



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