アスキー総合研究所 > ニューズレター・フォーラム > ニューズレター > 『NARUTO』900万部のフランスマンガ事情
2009年07月26日 00時00分
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| 日本の書店にいるような錯覚を覚える「フナック」の日本マンガ売り場。床に座ってマンガを読む子供たちもおり、店員が注意していた。 |
「フナック」(fnac)は、フランス国内で88店舗を展開する、ヨドバシカメラ+TSUTAYAともいうべき大型量販店だ。今回取材したモンパルナス店も、ヨドバシ秋葉原店を思わせる広さで、1階がモバイル、2階がPCや大型テレビ、3階、4階が書籍、地下はDVD、CDといった具合で、ほかにギャラリーなどもある。日本のマンガは、初期には専門書店などで売られていたが、現在はこうした量販店や大型スーパーで多数販売されているという。
とくにフナックは、マンガ専門コーナーを設けてきめ細かな棚作りをしていることで知られる。フナックのマンガコーナー担当者に、同店での日本マンガの売り方や客層について聞いた。
―― このマンガ売り場はいつできたのですか?
フナック担当者(以下フナック) 1年半前の改装のタイミングで、マンガ売り場をつくりました。ぐるりと囲んだ棚は、新刊、「SHONEN」(少年)、「SHOJO」(少女)、「SEINEN」(青年)というふうにコーナーが分かれています。
また、店舗の真ん中あたりは、新作と同じような感覚ですが、話題の作家やマスコミが取り上げた作品を置いています。ほかに担当者のお薦め作品なども並べていて、現在のテーマは「ホラー系マンガ」ですが、ここはひんぱんに変えています。
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| 店内には、『ベルセルク』や『GANTZ』、『20世紀少年』も並ぶ。 |
―― フナックでは、それぞれの店舗にマンガ売り場があるのですか?
フナック フナックは88店舗を展開していますが、そのうち85店舗に書籍売り場があります。いずれの店舗でも、日本のマンガは扱っています。しかし、当店のようなまとまったマンガ専門の売り場を用意しているところは、まだ数店ですね。レヌとレアーヌの2店舗はフナックの代表的な店舗ですが、この2店はマンガのアンテナショップ的な役割をはたしています。マンガは、出版社にとっても、書店にとっても、かなり大きな売り上げになってきているので、もっと大々的にやるための試みを行っているわけです。
―― どのようなことをお考えなのでしょうか?
フナック 当店ではすでに準備中ですが、マンガ売り場の中には、やはりグッズも入ってよいですよね。たとえば、『BLEACH』(ブリーチ)だったら、フィギュアもいっしょに置くとか、マンガ関係の商品が1つの空間にあればいいと考えています。これは、いずれすべての店舗に広がるのではないかと思っています。
―― マンガの新刊は、毎月どのくらい並ぶのでしょう?
フナック 今月は、ジャパンエキスポの影響で少し多いのですが、新しいシリーズはだいたい10タイトルくらい。通常の月で、新刊が40~50冊くらいでしょうか。
―― 少年、少女、青年のジャンルの比率は?
フナック いちばん大きいのは、やはり少年マンガですね。青年の中には、エロ的なものとか暴力的なものも一部含まれています。
―― BLとかやおいとかは?
フナック 最初は、やおいとかBLとかは少女コーナーに置いていて、見た目だけではわかりませんでした。ですが、内容を考えて、離れたところに置くようにしたところ、結構な人気を得ています。
―― 担当者のお薦めコーナーには、どんな本が並んでるんですか?
フナック マンガ売り場の担当者になったのは1年前なのですが、そのときに勉強のために読みました。そのときに気に入ったのが、『MONSTER』、『ホムンクルス』、『ベルセルク』、「GANTZ」とか……。
―― 販売数はずっと増え続けているのでしょうか?
フナック 実は、昨年のクリスマスから、勢いが少しなくなってきている気がします。いろんな情報があるんですが、出版される本の数が多いことが原因かもしれません。
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| フランスのマンガである「バンド・デシネ」コーナーの一部にも、日本のマンガが置かれはじめている。 |
―― バンド・デシネの売り場にもマンガが置かれているのですね。
フナック マンガコーナーで動きが悪くても、質の高いものだと思ってバンド・デシネの売り場に置いてみると、だいたいヒットしてしまうんですよ。ということで、日本のマンガファンでない人も読むようなマンガを置くようになっています。このあたりは客層が似てきているんですね。
―― 日本でも、文学性のあるマンガというんですか、大人の読むものは少し違う読者層になっていると思います。
フナック 現状、バンド・デシネの売り場と日本のマンガ売り場は、ちょっと離れた位置にありますが、わたし自身としては、マンガとバンドデシネはそんなに違いがないと思っているので、すぐ隣にあってもいいと思っています。
―― 『アンダーカレント』は、賞をもらったと書いてあるんですね。それから、松本大洋のハードカバーとか……。こうやってみると、たしかに親和性がありますね。日本人からすると、かなり意外なものまで訳されています。
フナック 少年マンガの領域に入らないものですね。
―― 吾妻ひでおの『地を這う魚』もありますが、これってどのくらい売れるのですか?
フナック 1カ月に3冊程度です。
―― たぶん、これより前の『失踪日記』は結構売れたんじゃないですか? 『地を這う魚』が、『はだしのゲン』や手塚治虫モノと、『聖おにいさん』と並んでいるのがすごい。
フナック やはり、マンガとバンド・デシネの売り場は隣のほうがよいかもしれません。
―― 一番売れているのは『NARUTO』ですか?
フナック 『NARUTO』は、この店舗だけで最新巻は1カ月で362冊出ています。『ワンピース』もだいたい同じくらい出ていますね。
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| 取材した7月7日には、地下のイベントスペースで谷口ジロー氏の講演会が行われていた。 |
今年3月にJETRO(日本貿易振興機構)がまとめた調査レポート『フランスを中心とする欧州におけるコンテンツ市場の実態2008-2009』によると、フランスにおける日本マンガの累計販売部数は、少年マンガでは『ドラゴンボール』が1900万部、『NARUTO』が約900万部、少女マンガでは『フルーツ・バスケット』が約200万部、『NANA』が約120万部とある。
また、2008年の日本マンガの新刊出版点数は、1453タイトル。おおかたの予想を超える部数と出版点数だと思うが、実は、日本マンガの販売部数の約50%を、上位のわずか12シリーズが占めているとも指摘されている。しかし、ジャパンエキスポ会場やフナックの売り場を見る限り、『NARUTO』や『NANA』の人気はもちろん凄いのだが、それ以外の作品の露出も増えているように思われる。出版点数の増加を市場の拡大が吸収しているとすると、どこかで均衡するのではないだろうか。
しかし、現状では多く訳されている作家や出版社とそうでないものとの間には、明らかに偏りがあるようだ。日本のマンガに関する情報の流れや出版社の動き、フナックの担当者が試みているような売り場の変化もあり、フランスのマンガ市場はまだまだ変化していくようである。