アスキー総合研究所 > 所長コラム > iPhoneとAndroid、どっちを使う?
2009年08月25日 23時00分
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モバイルの世界が、かなりの勢いでフルタッチ型スマートフォンに向かって動き出している。日本ではiPhoneが動き始めたところで、Androidの認知はこれからといった状況だ。ところが、世界では、日々さまざまな話題が飛び交っている。
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上のリストはめぼしいものを拾っただけだが、1つずつ取り上げていくと、モバイルの世界は大きな局面を迎えている感がある。こうした動きの中で、いま注目すべきは、グーグルの携帯プラットフォームである「Android」とその周辺だろう。
2008年9月に、ニューヨークでAndroidの発表会は行われた。そこで取材したNテレビのSさんからは、「iPhoneにとても良く似ているという印象でした」というメールが届いた。「創業者の2人までが登場する力の入れよう」とも書かれていたのだが、たしかにグーグルとしてはとても重要なビジネスなのだといま実感している。
iPhoneとAndroidの違いについては、このコラムでも、いくつかポイントを挙げて書いたことがある。「iPhoneはアップル1社でやっていて、Androidはオープンソース」とか、「Androidはクラウドのフロントエンド=グーグルはひたすらネットに繋がる端末が増えることをねらっている」とか、「グーグルはFacebookのような個人の情報に出遅れているが、携帯は、究極のパーソナル戦略になる」などだ。
おそらく、どれも外れてはいないと思うが、心の底では「iPhoneにとても良く似ているという印象でした」という言葉がひっかかっていた。要するに、舞台裏の思惑こそ異なるものの、「iPhoneみたいな世界」を提供するのがAndroidだと、わたしも思っていたのだ。ファイルやフォルダのようなコンピュータっぽい概念がなく、指だけで直感的に操作できるところなど、Windows Mobileなどとは一線を画するという点では一致しているのだが。
ところが、この「Android=iPhoneに似たもの」説は、どうも根本的に間違っていたようなのだ。
日本にとっては、iPhoneをキャッチアップすることが先決である。まずはそこからなのだが、Androidによって、iPhoneの先にある世界が見えてきそうなのだ。
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| ※[]内は、S=Symbian、W=Windows Mobile、P=Palm OS、その他独自OS、独自UIなどを示す。 |
きっかけは、1カ月余り前にNTTドコモのAndroid端末「HT-03A」を入手して使いはじめたときのことだ。日本語入力のことやメーラーなどについて、グーグル・グループにある「日本Androidの会」に質問を投げさせてもらっていた。そこで、「INTENT」というしくみのことを教えていただいた(Androidプログラマの方々には遅いと指摘されそうだが)。
iPhoneの魅力は、なんといってもそのシンプルさにある。ホーム画面は、テレビのリモコンよりもボタンの数が少なく、それを押せばアプリが起きるだけの仕組みといっても大げさではない。iPhone OSそのものは、「アプリランチャー」と言い切ってもよく、むしろ「感触」や「直感」や「デザイン」に注力して作られている。逆に言えば、それが素晴らしい。
それに対して、Androidのトップ画面は、いかにも中途半端な印象をまぬがれない。壁紙があり、時計があり、妙なところからフンドシのようなメニューがせり上がってくる。しかし、アプリケーションの実行環境については、AndroidはiPhoneよりもだいぶ新しいのだ。iPhone OSは、いかにも小学生的な「お行儀」のよさの世界である。それに対して、Androidは単に自由度が高いというのではなく、その設計思想にグーグルの狙いが見える。
手近な説明では、HT-03Aに標準で入っている画像ビューアがある。これで何らかの画像を見ているときに、「menu」から「共有」のボタンを押すと、「Gmail」「Picasa」「K-9」……といった項目の並ぶメニューが表示される。これは、画像ビューアがINTENTというものを発行して、これらのものが「私が対応できます」と手をあげている感じなのだ。
INTENTとは、ウェブAPIで受け渡されるデータ形式のようなもので、Androidでは、いわばアプリケーション同士がマッシュアップするのに使われる。ここで注意しなければならないのは、Picasaがあるのを見ても分かるとおり、アプリケーションとウェブもマッシュアップが可能ということだ。
この説明をすると、「iPhoneにもアプリ連携の機能はありますよ」とか、「iPhoneにも、アプリからデータを受け渡す先を選べるソフトはあります」などと言われたりする。しかし、その意味は本質的に違っているのだ。
たとえば、ネットを使うあるサービスを開発して起業したとしよう。これをiPhoneで適切なアプリケーションから使うには、一般に専用のiPhoneアプリを用意してやる必要がある。そして、そのアプリを普及させなければならないのだが、実のところ、それがiPhoneアプリで商売するときの最大の課題なのだ。
それに対して、Androidを対象にする場合には、いまある有名ソフトが発行するINTENTに対応してやればよい。画像なら、HT-03Aに標準の画像ビューアで「共有」ボタンを押したときに、自分のサイトが選べるようになる。専用ソフトを流行らせる必要があるのとは、次元が異なっている。
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| iPhoneの場合、アプリケーションとWebサービスは、基本的に固定的である。Twitterのような有名サイトを利用するアプリは複数あるが、逆に、特定のアプリに複数のサービスが対応するかたちはできにくい。 |
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| Androidでは、ある機能を持ったアプリ(本文中では画像ビューア)がINTENTを発行。システムが対応するアプリのリストを表示する。ユーザーは、この中からアプリを選んで連携させられる。暗黙的に連携させたり、複数のアプリに処理を引き渡すことも可能。 |
この構造は、ウェブにリンクの仕組みしかなかったところに、ブログでトラックバックが登場したのを連想させる。トラックバックが、勝手に相手のサイトに自分のサイトへのリンクを貼れてしまったように、勝手にメジャーなソフトから自分のサイトにつなぐことが可能となる。
INTENTは、Androidのアプリケーションの実行環境の基本であり、非常に広く深い内容を含んでいる。アプリとウェブサービスの連携は、その応用的な使い方の一例に過ぎない。日本Androidの会でも、具体的なソフトウェアの利用場面を想定したINTENTについての議論がされているようだ。INTENTに関して、より正確に知りたい方は、『Google Androidプログラミング入門』(アスキー・メディアワークス)をご覧あれ。
Androidは、モバイルとクラウドの時代におけるソフトウェアの進化に、ちょっとした影響を与える可能性がある。
※次回に続く
アスキー総合研究所所長の遠藤 諭が、コンテンツ消費とデジタルについてお届けします。
本やディスクなど、中身とパッケージが不可分の時代と異なり、ネット時代にはコンテンツは物理的な重さを持たない「0(ゼロ)グラム」なのです。