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【所長コラム】「0(ゼロ)グラム」へようこそ Act.33

iPhoneとAndroid、どっちを使う?(続々々)

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2009年09月28日 21時00分

Marshall McLuhan

 「とても似ている」ように見えたiPhoneとAndroidが、実はかなり違ったものであることを、前回までに述べた。決定的な違いは、iPhoneは基本的にシングルタスクであり、同時に1つのことをやる端末であるのに対して、Androidは、自分にかかわるネット上のステータスを伝えるダッシュボードのような役割を果たすことだ。

 インターネットが普及して、コミュニケーションのスタイルが変化すると言われた。『WIRED』誌が、マーシャル・マクルーハンを「パパ」と呼んだのも偶然ではない。テレビや電話などの「メディア」は、それを使う人の知覚器官の延長であるとか、「メディア」自体が意識や思考を決定するといったマクルーハンの見方が、リアリティを持ってきたからだ。

 新聞や雑誌の時代には、ニュース記事や論評によって形成される世論などによって、人々の考え方が決まった。しかし、ネット上でケータイやソーシャル・メディアを活用する人と、新聞や雑誌などの従来型のメディアの中で暮らしている人との間では、意識にかなりの違いが出てきている。日本人は、ネットと非ネット、さらにはケータイという3つの人種に別れたのだといっても大げさではない。

 けれども、iPhoneに関していえば、マクルーハンがテレビや電話を論じていた感覚がまだ残っている。2006年1月に「iPhone」が発表されたとき、わたしはMacworld Expoの会場で、アップルの担当者に「iPhoneで使われているOSは何なのか?」と聞いた。答えは「Mac OS Xだ」と返ってきたのだが、「だけど、電話なんだよ」とその人物はつけ加えたのである。

 iPhoneは電話である以上、「電話をかけて・通話して・フックする」という操作の流れが、「アプリを起動して・使って・ホームボタンを押す」に対応する。それに対して、Android端末は、画面上にネットワーク上で自分に関係するステータスが、どんどんプッシュされた状態となる。「ホームボタン」を押してもアプリが終わるわけではない。その代わりにあるのが、「戻る」ボタンだ。iPhoneが電話のように「かけて・切る」であるのに対して、Androidにあるのは「状態の遷移」なのだ。

T-Mobile Sidekick
Androidプロジェクトの中心人物であるアンディ・ルービンが開発したデインジャー社の「HipTop」(T-Mobile Sidekick)を見ると、Androidと同じ「ホーム」「メニュー」「戻る」の3つのボタンが揃っている。Androidの内部には、「戻る」ために「Content Provider」という機能がある。データをSQL liteで読み書きしながら実行するものだ。

 いまわたしが使っているAndroid端末「HT-03A」では、「Twidroid」というプログラムが、Twitterのアップデートをステータスバーやバイブレーションで知らせてくる。「Reuters News Widget」は、最新のニュースを小さな窓に表示する。「天気予報」のウィジェットも動いていて、プラハとニューヨークの時刻や天気や気温を表示している(そろそろ出かけたいと思っているところ)。

 iPhoneが、こちらから随意的にネットをアクセスにいくメディア(神経器官)であるのに対して、Androidは、ネット上のメディアがHT-03Aの画面まで神経を這わせているような感じだ。つまり、問題はiPhoneが「電話」であるのに対して、Androidは「何か」ということだ。

サブ100$Android対iPhoneの
歴史的対決が始まる

 もともと、情報というものの流れは、人と人のネットワーク的なものからはじまったはずだ。それが、新聞やラジオが影響力を持つようになって、メディアの時代がやってきた。そして、テレビの登場や大量生産によって、20世紀は締めくくられたのだといってよいと思う。しかし、いまは「ソーシャル」という人の人のネットワークが、また意味を持ってきている。

 ブロードキャスト的な情報の流れに対して、人と人の関係による情報の流れが力を持ちはじめているのだ。「あなたの友だちの××さんはこのバナーをクリックしました」といった調子のソーシャル広告は、それの具体的な利用例だ。アスキー総研が販売している『iPhone利用実態調査』の認知経路・購入理由でも、Twitterやブログが占める割合がきわめて高い。

 こうしたコミュニケーション・スタイルの変化という背景があるから、iPhoneかAndroidかという議論は、注目すべきテーマなのだ。

iPhon & Human
iPhoneは、端末から操作してネット上のさまざまなサービスを利用する。それに対して、Androidではネット上のサービスが端末に神経を張っているような図式となる。「歴史は繰り返す」的にいえば、開発の自由度の高いAndroidがWindows的市場支配をすることになるが、コミュニケーション・スタイルを決める端末となると必ずしもそうとは言えないのではないか? 2大勢力となっていくことは確かだが。

 iPhoneとAndroid、あるいはiPhone的なシンプルな操作性とAndroidのネット融合的な操作性は、これからのコンピューティングの「2大勢力」となっていくに違いない。わたしの世代では、iPhoneのようなシンプルな端末のほうが安心して使えるという人も少なくない。いまiPhoneで満足している人は、そこから離れようとしないかもしれない。実は、iPhoneが、(電話なみに)「シンプル」であることの意味は、非常に大きいような気がしてならないのだ。

 一方、Androidは、バーチャル空間と融合したりネットに飛び込んでいく世界をめざしているように見える。前回触れたような、優れたカスタムUIがAndroidの上に搭載されたものや、非Android端末でも、Palm Preに代表されるネットワークコネクテッドな発想の端末を、バシバシ使いこなしていく人たちも増えてくるに違いない。

 この2つの勢力は、「サブ100$」のAndroid端末とiPhoneの低価格モデルによって、一気にブレイクするものと思われる。その時、コミュニケーションとメディアの世界は、本質的に変わりそうだ。


「iPhone」 利用実態調査

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■このコラムについて

 アスキー総合研究所所長の遠藤 諭が、コンテンツ消費とデジタルについてお届けします。

 本やディスクなど、中身とパッケージが不可分の時代と異なり、ネット時代にはコンテンツは物理的な重さを持たない「0(ゼロ)グラム」なのです。

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