アスキー総合研究所 >  所長コラム > Twitterはコミュニケーション革命なんかじゃない(2)

前へ 1 2 次へ

【所長コラム】「0(ゼロ)グラム」へようこそ Act.41

Twitterはコミュニケーション革命なんかじゃない(2)

  • 最新情報を購読
  • はてなブックマークに登録
  • del.icio.usに登録
  • livedoorクリップに登録
  • Buzzurlに登録
  • StumbleUponに登録
  • Google Bookmarksに登録
  • Facebookでシェア
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • お気に入りに登録

2010年01月14日 22時44分

パプア・ニューギニアのホタル
パプア・ニューギニアのホタル「プテロプティック・エフルゲンス」は、1本の木にとまった何百万匹もの個体が、誰かが指揮をしているわけでもないのに、同期して一斉に明滅を繰り返す(画像は実写ではなくイメージです)。

 いまから10年ほど前の1998年に、科学雑誌『Nature』に1つの論文が掲載された。ワッツとストロガッツという2人の研究者によるもので、彼らの著書も翻訳されているのでご存じの方も少なくないだろう。いわゆる、「スモールワールド・ネットワーク」に関する論文である。

 Twitterが人のつながりのネットワークだと知って、「6次の隔たり」のことをイメージした人も少なくないはずだ。「6次の隔たり」(Six Degrees of Separation)というのは、世界中から無作為に選んだ2人の人物が、6回前後の人間関係で繋がってしまうというお話。1960年代に心理学者が実験して有名になったが、ワッツとストロガッツの論文は、これを数学的に証明したものである。

 何年か前には、ドイツの新聞社が、フランクフルトのシシカバブ店のオーナーと、彼がファンだという俳優のマーロン・ブランドの関係を調べたそうだ。新聞社ならではのリソースを投入して得られた結論は、みごと6個のリンクを経て繋がったというものだった。

 しかし、この論文が注目された理由が、単純に「世界中の人が繋がっている」というような議論ではなった点に注意すべきである。

 『スモールワールド・ネットワーク/世界を知るための新科学的思考法 』(ダンカン・ワッツ著、辻竜平・友知政樹訳、阪急コミュニケーションズ刊)によれば、研究者の1人であるワッツがこのテーマに興味を持ったのも、「6次の隔たり」が理由ではなかった。

同期して明滅する無数のホタルの光と
Twitterの類似性

 パプア・ニューギニアで、マングローブの葉にとまった何百万匹ものホタルが、きわめて正確なリズムで明滅するという映像を、テレビや映画などで見たことがある人も多いと思う。木の反対側や離れたところにいるホタルもいて、音やその他の信号でリズムをとっているわけでもないのに、「プテロプティック・エフルゲンス」というこのホタルは、すぐに光を同期できてしまう。

 一方で、整然と並んだ「一覧表」のような情報が、産業社会では好んで使われてきた。あるいは、本社から支社、支社から事業部、事業部から部門へと「階層」で管理されている場合もある。コンピュータの世界も、データを規則的に並べるやり方を得意としてきた。ネットワークやデータベースも、ツリー構造やリング構造など、検索のスピードを上げるための意図を持ったルールで作られている。

 ところが、こうした人工的なシステムは、1カ所が壊れると全体が機能しなくなることがある。そのために、システムを二重化したり、バックアップを持たせたりしなければならない。しかし、自然界は、バックアップなどという発想がなくとも動き続けている。自然界に存在するネットワークは、一見デタラメにも見えるが、きわめて強靱で、しかも想像よりもずっと高いパフォーマンスを発揮するということである。

 アスキー総研で行った『Twitter利用実態調査』の結果を見ていて気になるのは、やはりネットワークとしてのTwitterだった。ユーザーの平均フォロー人数は184人、平均フォロワー数(フォローされている人数)は173人。1日の平均つぶやき数は約10回で、Twitterの接触時間は約3時間にもなる。つぶやく数の割に接触時間が長く、つぶやくよりも圧倒的に読んでいることがわかる。

Twitter画面
わたしが、Twitterのネットワークとしての性質を調べたくて、知りたいと思った4つの情報のうち3つは、なんとTwitterの個々人のホーム画面に表示されていた。Twitterの本質が、人と情報のネットワークであることを象徴しているともいえる。

 ユーザーが3時間で読める文字量は、仮に1分間400文字として、1時間で2万4000文字、新書なら1冊読めてしまう可能性もある。ひとことでいえば、Twitterで「21世紀型活字中毒」になっている人が少なくないということである。この文字と時間の消費は、キンドル上陸やアップルの電子書籍リーダー上陸ばかりを騒いでいる場合ではないのではないか?

 このようにいうと、いままでだってネット上に文字はたくさんあったのに、なぜTwitterだけ「21世紀型活字中毒」になってしまうのか? と指摘されそうだ。

 事実、世界中のサーバは、すでに気の遠くなるような量の文字であふれている。グーグルは現在、15億ページ程度を索引化しているといわれるが、インターネットには「深層」と呼ばれるものがあり、同社は2008年7月に「1兆個のページを見つけた」と言ったそうだ(『Google PageRankの数理』エイミー・N・ラングヴィル/カール・D・マイヤー著、共立出版刊)。

前へ 1 2 次へ

■このコラムについて

 アスキー総合研究所所長の遠藤 諭が、コンテンツ消費とデジタルについてお届けします。

 本やディスクなど、中身とパッケージが不可分の時代と異なり、ネット時代にはコンテンツは物理的な重さを持たない「0(ゼロ)グラム」なのです。

2012年01月
2011年12月
2011年11月
2011年10月
2011年09月
2011年08月
2011年07月
2011年06月
2011年04月
2011年02月
2010年11月
2010年10月
2010年09月
2010年08月