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【所長コラム】「0(ゼロ)グラム」へようこそ Act.43

あなたの頭とインターネット

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2010年02月01日 16時12分

「脳の世界とコンピューターの世界が近づいている」

 このコラムでも以前一度触れましたが、11月上旬に、脳の研究者である池谷裕二さんにインタビューさせていただきました。インタビューをお願いしたいと思ったきっかけは、『複雑な脳、単純な「私」』(朝日出版社刊)を読んでいて、どうも“コンピュータの匂いがする”と思ったからです。

別冊アスキー
週刊アスキー増刊『別冊アスキー Windows 7 今日から使います!』

 インタビューの掲載された『別冊アスキー』が、いま書店に並んでいます。すでに「面白かった」とか、「興味深い」とかいう言葉をメールやTwitterでいただいているのですが(ありがたい)、「脳の世界とコンピューターの世界が近づいている」という記事です。

 その記事の後半に、池谷さんが「ちょっと言いたいことがあるんですけど」と切り出してくる部分があります。「未来がなぜ予測できないか」というお話なんですが、これが、脳のメカニズムの話と関係してくるというのです。あんまりシロウトが話を突っ込んでいくところではないのですが、1点だけ、「ガーン、やっぱりそうかぁ」という部分がありました。

 脳は、はじめは「脳幹」という中央コントロールセンターみたいなところが、全体を支配していました。は虫類や鳥類、両生類などでは脳幹が生命をつかさどっていますし、情動というものもそこで動いています。それが、進化の過程で脳は外側にどんどん増築する感じで大きくなっていきました。ほ乳類では、いちばん外側の大脳皮質が大きくなりました。

 ねずみの大脳皮質は、広げても100円玉くらいしかないのに、人間はとても大きくなっています。この、いちばん新しく外側にできた新興住宅地というか埋め立て地みたいなところで、ある事件が起きます。サルと人間の間で、「なぜこんなに違うのか?」というくらいの変化が起きたのです。

「大脳皮質が大きくなりすぎて、数的に脳幹よりも多くなっちゃったんですよ。そのとき、水から一気に氷になるかのような相転移が起きました。今までは脳幹が脳を全部支配下に置いていたのが、自律的に動くようになった大脳皮質が、脳幹を制御する時代になったんです。そして、それが起こってるのは、どうも人間だけらしいのです」(池谷氏)

脳の相転移

 これって、コンピュータ業界に少し長い人なら、なんとなく連想することがあると思います。コンピュータは、1940年代には、ネットワークというものはなく、1台で動いていました(スタンドアローン)。ですが、コンピュータのハードもソフトも進化していって、巨大化していきます。やがて、テレコミュニケーション技術が生まれ、ホストコンピュータに端末がぶらさがるようになりました。

 銀行システムでいえば、本社にメインフレームの大型機がドンとあり、それに支社のシステムがぶら下がるという、きれいな中央コントロール構造になっていました。もちろん、後にインターネットに発展するUNIXのネットワークなどはありましたし、1980年代にも公衆パケット網なんかがありました。しかし、世の中全体では、情報システムというのは中央コントロール的に管理するという考えが一般的だったのです(いまもそうだというべきなのですが)。

 ところが、1990年代にかけて、世界中でパソコンやワークステーションが、毎年何千万台と作られていくようになりました。そして、IP(インターネットプロトコル)がそれらをつないでいって、ついには中央コントロール的な世界を脱するかもしれないというようなところまで来ています。人間の脳の中で大脳皮質が起こした革命(相転移)のようなことが、あってもおかしくないと思います。

 それが、いまのネットなのでしょうか? あるいは、いまのネットは相転移のギリギリのところまでは来ているけれど、まだ起きていないのでしょうか(記事ではこっちだろうという話でした)。

『プラニバース』(A・K・デュードニー著、工作舎刊)という本があります。二次元宇宙があったらこんなふうに動いているだろうと、ビジュアルも使ってあれこれ考察した本です。その二次元宇宙に住んでいる二次元生物には、三次元の世界で起きていることがわかりません。三次元という概念すらも理解できないでしょう。BASIC言語の世界にいては、FlashのAction Scriptの世界はわからないみたいなお話でもあります。

 つまり、もし仮にネットですでに相転移が起きているのだとしても、二次元生物のように、相転移のこちら側にいるわたしたちには、それをうかがい知ることはできないのではないでしょうか。動物が人間になったようなことが起きていたとしても、わたしたちにはわからないのです。

 我々の想像もつかないところで、インターネットに想念のようなものが生まれていたりするのかもしれません。

 脳の進化とコンピュータの進化が、少しばかり似ていると思うわけです。ならば、コンピュータの世界で相転移が起こることだってあるだろうというお話です。このほかにも、ザリガニの脳を2つつないで新しい計算理論を求めようという話とか、ヒューマノイド型ロボットを作ることが実は重大な意味を持っていることなど、興味深いお話をいくつもお聞きしています。週刊アスキー増刊『別冊アスキー ウィンドウズ7 今日から使います!』、ぜひ『複雑な脳、単純な「私」』もあわせてご覧アレ。

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■このコラムについて

 アスキー総合研究所所長の遠藤 諭が、コンテンツ消費とデジタルについてお届けします。

 本やディスクなど、中身とパッケージが不可分の時代と異なり、ネット時代にはコンテンツは物理的な重さを持たない「0(ゼロ)グラム」なのです。

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