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「ASCII Research Report」 リアルタイムウェブ時代の企業ブランディング セミナー

Twitter界の著名プレーヤーたちが語る、Twitter企業活用の鉄則

文=まつもとあつし 写真提供=ケツダンポトフ(http://ketudancom.blog47.fc2.com/)、ASCII.jp

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2010年04月12日 18時50分

第1セッション
「企業はソーシャルメディアといかに取り組むべきか?」」

 引き続きKNN神田氏をモデレーターに、以下のパネリストで最初のパネルディスカッションが進められた。第1セッションは「企業はソーシャルメディアといかに取り組むべきか?」と題して、TwitterやUstreamの企業活用を俯瞰して見ている立場のパネリストによって、その現状や今後のトレンドが議論された。

・株式会社モディファイ 代表取締役 小川 浩氏
・株式会社日立コンサルティング コンサルタント 小林啓倫氏
・株式会社ループスコミュニケーション 代表取締役 斉藤徹氏
・アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 代表取締役 徳力基彦氏
・野村総合研究所 シニア研究員/日本ナレッジ・マネジメント学会 専務理事 山崎秀夫氏

NRI山崎氏
NRIシニア研究員の山崎秀夫氏。「Twitterは生命力が弱い。それが逆に強みでもある」。

 NRIの山崎秀夫氏は、早くからmixiなどのソーシャルメディアに着目し、この分野では一家言ある人物だ。かねてより山崎氏は「ソーシャルテレビ」がブームになると指摘してきたが、周囲の反応が薄かったところに、Ustreamがにわかに人気となった。だが、山崎氏は、UstreamやTwitterはFacebookアプリの言わば“パクリ”に過ぎず、あまり評価していないという。過熱気味のブームに対してやや冷や水を浴びせかけるようなかたちだが、日本に比べて、例えば韓国のソーシャルテレビはかなり先に行っていることを山崎氏は指摘する。

 韓国では3月末の世界フィギュアスケート選手権でのキム・ヨナ選手の演技が、ニコニコ動画のようにコメントができるサービスで中継され、約40万人が視聴・参加したという。これは、テレビの視聴率として考えても、かなり大きなインパクトを持つ。そのボリューム感の中では、マイクロペイメント(少額での課金。いわば投げ銭システム)によるビジネスモデルも成立しつつあると山崎氏は語った。

 一方で、国内でのソーシャルテレビ=Ustreamの勢いを実感させた出来事として、3月22日(放送記念日)にUstreamで放送された「激笑 裏マスメディア~テレビ・新聞の過去~」を挙げたのは、日立コンサルティングの小林啓倫氏だ。堀江貴文氏や津田大介氏らが、NHKの番組「激震 マスメディア ~テレビ・新聞の未来~」にツッコミを入れる内容をUstreamで放送したもので、視聴者は最大で8,000人を超えたと言われている。いままではマスメディアが一方通行に発信するだけだったのが、Ustreamの登場によって、勝手に裏番組を作って自分たちの意見を発信できるようになったこと、そして相乗効果を発揮するようになったことに、小林氏は面白さを感じている。

日立コンサルティング 小林氏
株式会社日立コンサルティングのコンサルタント小林啓倫氏。『「ツイッター」でビジネスが変わる! Twitter Power』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊、ジョエル・コム著)の訳者でもある。

 それに対して、モディファイの小川浩氏は「あえてソーシャルメディアを使わない」戦略もあり得るのではないかと語る。iPadでさらなる躍進が予想されるアップルにしても、ソーシャルメディア活用からはかなり遠いところにいる。もちろん、ソーシャルメディアの意義を理解しないままということではない。十分に把握した上で、“刀を使わずに勝つ”というのもひとつの選択肢だというのだ。あるいは、「ソーシャルメディアマーケティング」や「ソーシャルメディアビジネス」という言葉が、数年のうちに(当たり前の存在となって)消えてなくなるのが、実は望ましい状態ではないかとも指摘した。

 アジャイルメディア・ネットワークの徳力氏が注目している最近の事例は、UCCのTwitter上での炎上問題と、そこからリカバリーの経緯だという(この問題への徳力氏の考察は、「UCCのTwitterマーケティング炎上事例に見る、マスマーケティングとソーシャルメディアマーケティングの境界線」で読むことができる)。現在のトヨタバッシングなどの問題への対応についても、ソーシャルメディアの活用が鍵になると指摘。トヨタ問題で多くの日本人が感じているであろう「あんなに叩かれて気の毒だ」といった感情を、ソーシャルメディアを通して大きくすることができれば、そして反感を持っている人たちとも辛抱強くコミュニケーションをとっていけば、この問題の行方やソーシャルメディアというものへの見方が変わるのではないかと説く。

 そして、ループスコミュニケーションの斉藤氏は、小川氏と同じく「Twitterが流行っているから使わなければならない」というところから、ビジネス展開を考えない方がよいと指摘する。Twitterをモニタリングすることはどこの企業でも簡単にできることで、自社のブランドがどのように語られているか、インフルエンサーはどういったユーザーなのかをまずは見ていくという、基本的なアプローチから入っていくことを、斉藤氏は企業に勧めているという。

 また、Whuffie(ウッフィー)という概念について、これはネット上における評価を仮想通貨のように見立てた概念で、『ツイッターノミクス』(タラ・ハント著/文藝春秋 原題『The Whuffie Factor』)などで紹介されているものだが、ソーシャルメディアによってコミュニケーションへの金銭的な投資は削減できる一方で、このWhuffieのような概念の重要度が増していることを指摘した。

AMNの徳力氏
アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 代表取締役の徳力基彦氏。「Whuffieは日本ではなかなか流行らないのではないか」。

 神田氏は、ここで「フォロワー数」という指標について、パネラーの意見を求めた。従来のバナー広告では表示回数と訪問者数がひとつの指標となるが、フォロワー数はそれに準じる指標となるのか。

 この問いに、徳力氏は「これまでは、アテンション(認知)からコンバージョン(購入に至る転換)との間に空白があった。Twitterにおけるフォロワー数という指標は、この間を埋める指標になり得るのではないか」と答えた。いままでソーシャルメディアを使ったマーケティングでは、例えばブログの場合は購読者数が分からないので、とにかく認知を得ようというキャンペーンだった。ところが、Twitterはフォロワー数が可視化されているので、認知を得るのではなく、またとにかくコンバージョンを得られればよいというのではない、違ったかたちのマーケティングが可能になるのではないかと徳力氏は語った。

 それに対して、山崎氏は「北米では、Facebook上のブランドコミュニティに何人ユーザーが参加したかを先行指標としてきた。それと連動してTwitterがあった。つまり、Twitterのマーケティングは、Facebookの派生だった」。そして、日本における課題は、そのFacebookの部分が欠けていることで、mixiがその役割を担っていないことだと強調した。

 徳力氏もその問題意識を共有しており、「Facebookは、企業の情報をそこに持って行っていくことを気軽にできるが、mixiのコミュニティは企業が情報提供をやりにくい土壌がある」とした。

フォロワー数は
多くなくてもよい!?

 神田氏が次にテーマとして挙げたのは「フォロワー数を増やすというのには、そろそろ無理が出てきているのではないか?」という点だ。

 これに小川氏は、「フォロワー数を増やすこと自体は、CMでのメッセージの工夫など、やり方次第で可能だ。けれども、何人にフォローされているかではなく、どれだけRT(リツィート)されたか、ツィート中のURLがどれだけクリックされたかが重要で、フォロワー数を増やすためにバナーを出すなどは本末転倒ではないか」と答えた。

モディファイ小川氏
株式会社モディファイ 代表取締役の小川 浩氏。「“続きはWebで”から、@Twitter名やFollow us(フォローしてね!)が、日本においてもCMのメッセージになってきている」。

 一方で、徳力氏は「Twitterは勝者のゲームではないか?」という疑問を呈した。あらかじめ知名度がある人や企業のアカウントは、比較的容易に多くのフォロワーを獲得できるのに対し、そうではない場合にはどうすればよいのだろうか。

 それに対して、小川氏は「そもそもソーシャル性が高いメディアになればなるほど、アテンション(注目)を集める力は弱くなっていく」と指摘した。Twitterがそうであるように、1つ1つのコンテンツは小さくなり、分断され、流れていく性質を持つからだ。単に「Twitterやってます」というPRはもはや通用せず、注目を集めるには、既存のマスメディアや他のメディアと組み合わせるしかない。

そのためには、
・まずはそこで何が語られているのかよく「聞く(調べる)」
・その上で自分たちから語りかけていく
・ソーシャルメディアに話題を提供するためには、そことは違う場所に優れたクリエイティブを用意する

の3点が欠かせないという。

 小林氏も「リスト機能や、様々なまとめサービス(「ふぁぼったー」や「Togetter」など)があり、フォロワー数自体は重要ではない」と語った。ブランド力が強力でなくとも、ユーザーに拾ってもらえるネタを提供し続けることで、その弱点は補えるという。

 さらに小川氏は、「ソーシャルメディア上でいくら企業が体面を取り繕っても、従業員がそれとは異なる本音のメッセージをツィートすることもあり、本当の姿がいずれにせよ浮き彫りになっていく。対ソーシャルメディアということではなく、企業全体としてどのようなメッセージを発しているのかを再確認し、必要に応じて再構築しなければならない」と指摘した。

ループスコミュニケーション斉藤氏
株式会社ループスコミュニケーション 代表取締役の斉藤徹氏。「企業のブランディングに、タレントを使ってイメージを提示するだけでなく、個々の従業員の発するメッセージがブランドを築いていく時代になった」。

 そして斉藤氏は、「販促プロモーションのような展開の場合は、確かにフォロワー数、つまり伝播力がどれだけあるかが重要になるが、企業ブランドのPRや対話ブランディングといった目的では、必ずしもフォロワー数が多いかどうかではなく、それぞれのフォロワーとの関係性をどれだけ高められるかが問われる。また、カスタマーサービスの場合は、“アクティブサポート”などと呼ばれるが、どれだけ積極的なサポートによって満足・感動を提供できるかが問われる。企業が何のためにTwitterを使うのか、目的に応じたKPI(重要業績指標)の設定が必要」だと整理した。

 なお、山崎氏はフォロワー数の話題から外れて「Twitter批判します」と前置きした上で、Twitterの弱点として、「Twitterは生命力が弱い」と指摘する。「アメリカでFacebookが勝っているのは、FacebookがTwitterの機能を完全に取り込んだ上で、Facebookが元々持つ人脈サイトの機能と統合することを選んだからだ(筆者注:だから、Facebookと真正面と競合することなく生き残ることが出来た)。また、TwitterはSNSが従来持つような個人対個人の濃密なコミュニケーションを取る機能が弱く、ネットの中毒性もない。逆に、このことがそこから生まれる異文化のギャップを生じさせず、国境を簡単に越えることができた。これがTwitterの強さであり弱点でもある」と分析する。

 またUstreamについても「過去、同様のライブストリーミングサービスは数多く存在した。その成否を分けているのは、ネットのコミュニティという意味でのクラウドとの一体化が図られているか否かだ。つまりマイクロトランザクション(サービスやコンテンツの細分化による伝達)で成功するには、コミュニティの支持がなければならない」と語った。UstreamとTwitterが伸びているのは、「これが一体化して、“ウィンテル”(PCにおけるインテルとマイクロソフト連合)になったからだ」と強調した。

 これに対して、神田氏は「日本では、漢字仮名交じり表現が可能で、英語圏より多くの情報を発信可能なことから、Twitterは独自の進化を遂げている」と指摘。山崎氏は「日本にはTwitterに対する天敵が居ない。いわば『島の魔法』が効いているため、日本のTwitterは海外とは異なり、SNS的な要素もはらみつつ進化している」と応じた。

 そして神田氏は、「Twitterなどのソーシャルメディアによって、企業はその本来の姿、つまり、良い従業員が良い製品・サービスを作り、それが顧客に支持されていく、というところに立ち返った」と語って、セッションは終了した。

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