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【所長コラム】「0(ゼロ)グラム」へようこそ Act.50

電子書籍端末、電子マネー、日本は2周遅れなのか?

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2010年08月20日 23時15分

台北電脳応用展
台北世界貿易中心で開催された「台北電脳応用展」。

 「台北電脳応用展」(Taipei Computer Applications Show=第20回 2010年8月5~9日)というイベントを、短時間だがのぞいてきた。台北でコンピュータショウといえば、世界最大規模をほこる「COMPUTEX TAIPEI」があまりにも有名。この台北電脳応用展は国内ショウで、わたしも1度来たことがある。今回は、メーカーブースは多くはなかったが、とにかく熱気が凄くて驚いた。

Garmin-Asus M10
Garmin-AsusのWindows Mobile搭載端末「M10」。

 COMPUTEXに行く方はすぐに規模感がつかめるはずだが、台北世界貿易中心(台北ワールドトレードセンター)のメイン会場だけを使って開催。今回のテーマは「Touch 雲瑞 3D新視界」ということで、「Touch」はもちろんタッチ、「雲瑞」とはクラウドコンピューティングの意味、「3D」というのは、いうまでもなく3D表示のことだ。

 いまや世界のスマートフォン市場で大きな存在となっている、HTCのブースはやはり人気。HTCは、米国のWebサイトを見ると28モデルもの端末を発売しているが、その主力はAndroidに移っているのはご存じのとおりだ。このショウでも、「Smart」や「Wildfire」(どちらもコンパクトなデザインの端末)など、日本ではまだ馴染みのないAndroid機をユーザーに触らせていた。

 台湾といえば、ポータブルナビ(PND)の生産台数もかなりのものだが、iPhoneやAndroidが出てきて業界が大きく動きだしている印象を受ける。それを代表するのが、GARMINとASUSTeKが一緒にやっている、Garmin-AsusのスマートフォンタイプのPNDだ。Windows Mobile搭載PNDの「Mio DigiWalker」も展示していたが、Garmin-Asusの「M10」も、Windows Mobile搭載である。

BENQ K60
台湾BENQの電子書籍端末、「BENQ K60」。

 今回、この電脳応用展に来ようと思ったのは、電子書籍端末が出ていると聞いたからだ。左の写真は、「BENQ K60」という電子書籍端末。台湾角川と共同で『YOUNG GUNS』という人気マンガに新作2巻分を加えて、9600台湾ドル(約2万6000円)で発売した端末を展示していた。標準端末は8900台湾ドル(約2万4000円)で、日本のイーブックジャパンとBENQの合弁によるeBookTaiwanから、すでにマンガをダウンロード購入できる。コンパクトで、タッチ画面の操作性も悪くない。

 いちばん派手に電子書籍端末を展示していたのは、コンピュータ業界関係者ならご存じの、ディスプレイメーカーViewSonicだ。廉価な6000台湾ドル(約1万6000円)クラスの端末から、電子書籍業界で注目を集めている「VEB632」も展示されていた。これは、作家、金庸の膨大な著作を収録した、いわばハード込みの全集もの的商品。金庸は、日本でも徳間書店などから翻訳が出ている武侠小説の大御所で、いま電子書籍端末を買える層が、それなりにお金に余裕のある人たちということだろう。

 テーマとなっている「タッチ」と「クラウドコンピューティング」と「3D」に関しては、日本や米国などを含めた各メーカーが対応商品を展示。iPad型のピュアタブレットは見かけなかったが、電子書籍端末は、一説には台湾では10種類ほど登場していると聞いた(会場では上記2社しか見なかったが)。

 「電子書籍端末は普及するのか?」と展示ブースで聞いたが、「普及する」というストレートな答えが返ってきた。電子ペーパー業界は、Kindleで使われているE Inkもいまや台湾資本(電子ペーパーの世界シェア60%という台湾PVI社が買収)。SiPixとともに台湾メーカーの動きが目立つ。台湾の業界的にもこれをコンピュータに次ぐ台湾の主力商品にしたいというのがありそうだ。

 ところで、今回、台湾でいちばんインパクトを受けたのは、ショウ会場で見かけたものではなかった。iPhoneで使うGoogle Mapsやfoursquareの便利さにも感動した(ソフトバンクの海外パケットし放題のおかげ。9月から始まるドコモの海外パケホーダイのほうが制限が少なくさらに期待だが)。しかし、いちばんのインパクトは、意外やわたしのポケットの中にあったのだ。

 わたしの「Tattoo」(Android端末)は、昨年11月に香港で買った台湾モデルである。その中に、台湾のSuicaといえる「EasyCard」のアイコンがあるのには気づいていたが、台湾に行くことがなかったので、起動したこともなかった。ところが、これがひとたび立ち上げると「うーん」とうならせられた。具体的には、以下のYouTube映像を見ていただくのが早いかもしれない。

 聞けばTattooは、裏ぶたに電子マネーのモジュールを組み込めるのだそうな。そこまでだと、日本のケータイなんかはとっくに「おサイフケータイ」になっているゾとなるのだが、なんと言ってもこのAndroidソフトには目を覚まさせられる。

 自分のいまいる位置の近くでEasyCardを使えるお店が、地図上にすみやかに出てくる。買い物やレストランや駐車場など、切り替えて見ることができるようだ。何でもない機能のように見えるし、事実、日本のガラケーでもできそうなものでもある。ところが、調べてみると、日本の電子マネーでは「Edy」が、お店の名前を文字で入れて「店舗検索」できるくらいしかやっていない。

 そのEdyも、ポイントがもっぱら売りになっているという意見もある(楽天傘下となったことで、それがキラーになる可能性もあるが)。「ポイントは単なるディスカウントになってはいけない」とは、名著『エスキモーに氷を売る』(ジョン・スポールストラ著、中道 暁子訳、きこ書房刊)に書いてあったことだ。儲けさせてくれる客を集めるツールであり、彼らに金を使わせるしくみがポイントであるはずなのだ。

 その点、このEasyCardアプリは、客をお店まで具体的に誘導する。Google Mapsベースなので、経路探索もできるのだろう。Androidならその柔軟性を生かして、適切なソフトと連携し、ほかのクーポンに繋ぐようなサービスの開発もできるなはずである。

 そしてもう1つ、このソフトの重大な効果があると思う。先のYouTubeビデオを見たら、たいていの社長なら「なぜうちはEasyCardと提携していないのだ!」となると思うからだ。このソフトの画面の視覚効果は、絶大ではないかと思う。

 さて、これを見て、わたしは「日本の電子マネーは2周遅れではないか」というようなことをTwitterでつぶやいてしまった。たかだかアプリを1個さわっただけで、その全体像を把握しているわけでもなく、ちょっと適切ではなかったとも思う。電子書籍も電子マネーも、日本は、技術的には、1周遅れどころかむしろ進んでいるとも思える。

VEB632
ViewSonicの電子書籍端末「VEB632」。金庸の著作を多数収録して、価格は1万4800台湾ドル(約4万円)。

 しかし台湾は、技術的な部分はさておき、さっさと製品を出して、しかもすでに適切なサービスを始めているのだ。

 2周遅れというのは、「すでに自分が遅れているのに、遅れていることに気づかなくなっている状態」のことなのかもしれない。遅れというのも「質的」なものだから、2周という言葉の妥当性があるわけでもない。しかも、台湾の電子書籍や電子マネーソフトの活用も、まだこれからというのが本当だろう。

 しかし、この原稿を書いている途中に、台湾でeBookTaiwanを展開しているイーブックジャパンの高嶋さんからメールをもらったのだ。

 同社は、昨年、iPhone/iPod touch向けの電子書籍配信を開始した。今年のはじめには、それが10万冊ダウンロードされたというリリースを出している。そのイーブックジャパンで、7月は「iPad向け」のダウンロード数が、「iPhone/iPod touch 向け」のそれの2倍だったという。

 世界は、どんどん動いている。2周遅れにならないように注意しましょう。

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■このコラムについて

 アスキー総合研究所所長の遠藤 諭が、コンテンツ消費とデジタルについてお届けします。

 本やディスクなど、中身とパッケージが不可分の時代と異なり、ネット時代にはコンテンツは物理的な重さを持たない「0(ゼロ)グラム」なのです。

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