アスキー総合研究所 > 所長コラム > アップルからはじめよう
2012年01月10日 22時40分
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レゾリューション(resolution)というと、コンピュータ業界の人は「画面の解像度」くらいしか連想しないが、本来の意味は「決意」である(resolveの名詞形ですかね)。そこで、1年のはじまりとなると、「New Year's resolution」(決意)とか、「prediction」(予測)となる。
この2つ、今年のIT業界にとってはどんなことになるのか? などと思っていたら、アップル系のPodCastに出演して欲しいという話がきた。その件で、事前に「アップルやマイクロソフトなどについて話したい内容」を教えてくれたら、構成に盛り込めるという連絡をいただいた。
なんとなく、「アップル」のことから今年のことを考えるのもよいかもしれないと思った。
いま、ネットとデバイスによって、我々は大きな時代の境目にいるのは確実で、そのペースメーカーになっているのは、アップルの製品に違いない。この会社を見ることで、デジタルのなんたるかを改めて考えてみるのが、今年の業界の動向を知るのによいと思う。アップルは、このコラムでも最も触れてきた企業だと思うが、過去わたしがこの会社について書いたものを探してみた。
「アップルストアじゃないんだよ」(東京カレー日記 2007年9月)
いまのiPhoneユーザーには関係ない話かもしれないが、その源流をたどると、アップルやHPなど米国のテクノロジーカルチャーに辿りつく。わたしは憧れているだけだが、そこには伝統や誇りがある。
「アリの巣観察キット的生活」(先見日記 2003年7月)
コンピュータは「ネットワークと周辺デバイス」によってしか進化しないというのが私の持論である。ソフトウェアのアイデア自体は、1980年代前半にほぼ考え尽くされていたのではないかとさえ思える。アップルの8ビット機「Apple II」の世界は刺激に満ちていた。
「アップルのやることはすべて正しい」(先見日記 2003年5月)
2003年頃の私の気分は、アップルがデジタルの世界で大きな勢力になるという予感だった。しかし、これには続編があって、元月刊アスキーのアップル担当のFくんにアップルはテクノロジーの会社ではないと教えられた(「ソニーとアップル」)。
「iPhoneは『携帯とPCを同次元にする』」(遠藤諭のケータイ出たとこレポート 2007年1月)
2007年1月のMac World ExpoでiPhoneを見たときの印象を書いたものだ。App Storeの予定もなく未来の電話として発売されたiPhoneだが、このようにしか受け入れられなかった(搭載CPUの予想は外れているが)。
「AndroidはiPhoneに対抗するべきではない」(スマートフォンオブザイヤー2010特別対談 2010年12月)
ちょうど1年前の記事で、夏野剛さん、神尾寿さんとの鼎談。立場の異なる3人の発言を比較すると興味深いのだが、私の発言は、とくにiPhoneとAndroidの違いやアップルのモノ作りの方法についての言及が多い。つまり、そのことが世の中ではあまり理解されてないと思う。
「ジョブズの否定した7インチタブレットこそが、クラウドのリモコンになる」(本コラム 2011年12月)
わたしがiPhone以上に興味を持っているといってもよいのがタブレットの世界。アップルは、なぜ7インチを出してこないのか? なぜiOSを端末から独立させないのか? 答えは、今年出てくるというアップルのテレビにあるかもしれない。
「スティーブ・ジョブズはどこにでもいる」(本コラム 2011年9月)
ジョブズのCEO退任のニュースを受けて書いたコラム。ジョブズという人物を語るつもりはないが、仕事人としてのジョブズについて少しばかり長くこの業界を見てきたつもりのわたしとして、感じていたことを書いた。
「続・スティーブ・ジョブズはどこにでもいる」(本コラム 2011年9月)
それでは、ジョブズを突き動かしているエネルギーは何なのか? 人間の本質的なところに触れてくるような気がしてうまくまとまっていないのだが、これが本当の話ではないかとも思う。
「ジョブズはパーソナルコンピュータそのものだ!」(週刊アスキーPLUS 2011年10月)
2011年10月にスティーブ・ジョブズが亡くなり、その日のうちに書いた追悼文。
ジョブズといえば、グーグルの元CEOであるエリック・シュミット氏が「過去50年、もしかしたら100年で、CEOとして最高の成果を上げた」と発言したのをご記憶の方もおられるだろう。しかし、これはエリック・シュミットという人物のバックグラウンドを考えると、微妙なニュアウンスを含んでいたと思う。
同氏は、ネット前夜からネットが一般に広がる1997年にかけて、サン・マイクロソフトシステムズでCTOまで務めた人物だ。この時代のサン・マイクロシステムズは、後の歴史家が見れば、いまのアップルよりも大きな影響力を持っていたと判断するかもしれない。彼らのUNIXとワークステーションがなかったら、いまのネット社会は少し違っていた可能性がある。
エリック・シュミットは、このことを言いたかったのではないが、アップルの躍進は「ネットのテクノロジー」という広大な大地の上で起きたことなのだと思う。この業界が、まだ未知の混沌とした世界にあることを知る人物が、次々と形のあるものを作っていくジョブズの手腕を評価していることに意味がある。
そこで思い出したのは、昨年夏に、ITに興味のある高校生の集まりに呼ばれて話したことである。
わたしは、彼らに「ITとは何か?」を説明しようと思った。ITとはコンピュータのことなのか? あるいは、コンピュータとネットを組み合わせた技術のことなのか? 「情報技術」と直訳するといよいよ分からない。ところが、ITという言葉が使われている場面を思い起こすと、その意味は明解に理解できる。
ITとは、「世の中のしくみを変えるための技術」のことなのだ。今年はITで何が変えうるのか? すべての業界人がそれだけを考えて関わってもよいと思う。
アスキー総合研究所所長の遠藤 諭が、コンテンツ消費とデジタルについてお届けします。
本やディスクなど、中身とパッケージが不可分の時代と異なり、ネット時代にはコンテンツは物理的な重さを持たない「0(ゼロ)グラム」なのです。